「曽良旅日記」を読む

金森敦子 「曽良旅日記」を読む: もうひとつの『おくのほそ道』 読了。

有名な芭蕉の「おくのほそみち」の旅。その旅の随行者、曽良が書き遺した旅日記から奥の細道紀行の実像を探ろうというもの。芭蕉の「おくのほそみち」が、文学的な虚構を孕んだフィクションの旅であるのに対して、「曽良旅日記」は事実のみを淡々と記している。一見そっけないが、無駄なものが削ぎ落とされた文章で、これはこれで名文なのかもしれない。ただ、これだけ短い心覚えのような文章から、旅を捉えるのはとても厄介で、工夫が必要になる。著者はこれまでの別の著書と同様に同時代の他の旅人の旅日記なども駆使しながら、曽良の短い文章からできるだけ多くのことをひきだそうとしている。また、有名な芭蕉にまつわるものだけに、旅先で会った俳人など、これまでの地域史研究の成果を活かせるのも強みである。年末から年始、ずっと読み続けてきたが、読み終わった時に、自分も一つの旅を成し遂げたかのような充足感があった。