プロフェッショナル

昔、学生時代に発掘作業のアルバイトをしたことがある。
東久留米市あたりの現場ではなかったか。
スコップのようなもので、
地面を削るように堀り進めたが、
私のまわりではいろいろな石器が出てくるものの、
自分のやっているところだけは何も出てこない。
大事な遺物を飛ばしたのではないかと、
内心ひやひやしながら作業をしていた。
そこには短い期間しか行かなかったが、
発掘の面白さはあまり感じられなかった。
自分は根っからの文献派なのだと思った。


谷畑美帆 江戸八百八町に骨が舞う―人骨から解く病気と社会 (歴史文化ライブラリー) を読んでいると、
こんな出土物があるのかと驚きべきものが載っていた。
前回と続けてあまり気持ちのよい話しでないが、
以下の通り。


近世の遺構からは、
屍蝋化した遺体も出土することがある。
こうした遺体は、
遺存状態などから言って、
資料として一級品であることはいうまでもない。
…(中略)…
「蠟」というからには、
遺体の色調は、当然、白である。
もう少し言うなら、
ちょうどケガをして絆創膏をしばらく張っておいてから、
はがした時に見る皮膚のあの白さだ。
全く日に当たっていない不健康で半透明な白、である。
もちろん、顔面には軟組織の一部が遺存しており、
爪まで残っていることもある。
あまり気持ちのいいものではないが、
一方で、屍蝋化した遺体が出てくると、
「これで、色々なことがわかるのでは」と、
わくわくするのも確かである。


また、屍蝋化したものはすごいにおいだそうで、
真夏に生ゴミをしばらく放置した悪臭を
100倍にした感じと記されている。
しばらく食べる気がしなくなるとのこと。
私がアルバイトに行っていた現場は、
古い時代の遺跡だったので、
出くわす可能性はなかったが、
こんなの掘り当てていたらうなされていたかもしれない。
それにしてもわくわくできるとは、プロフェッショナル。