ある出版社の設立趣意書

現在読んでいる青柳いづみこ 青柳瑞穂の生涯 真贋のあわいに (平凡社ライブラリー) に引用されている
第一書房設立の趣意」をメモ。


今日の出版界を見ますと、
極めて少数の摯実な人を除きました外は、
多く邪道に陥って概ね俗流に阿り過ぎていはしまいかと思われるのであります。
本来出版事業なるものは、
単なる一片の営利事業ではなく、
それは実に文化の基礎工事とも云うべきもので、
同時に文化を促進して世を導いて行くべき一種の予言的性質を帯びているものでありますのに、
現今の如く日に日に悪化して行く出版界の傾向は誠に残念の事と存じます。


第一書房設立の趣意」は、
第一書房が刊行した文芸誌『パンテオン』にはさまれていたものだそうですが、
昭和3〜4年頃のものなようです。
でも、なんだか現代のことを言っているとしか思えなくて、
思わずメモしてしまいました。
そういえば、今日朝日新聞を見ると、
人脈記として「わが町で本を出す」というシリーズが始まっていました。
第一回は中村哲の著書などを手がける福岡の石風舎が取り上げられました。
その末尾の文章。


いま出版は「冬の時代」だ。
それでも志を胸に、わが町で本を出す人々がいる。
それぞれの地方で筆者を探し、原稿を待ち、
校正をくり返し、在庫を抱え、
印刷会社への支払いに悩みながら。


これを読んでいると、ある出版社のことを思い浮かびました。
その出版社は登場するのかしら。