民俗学のこれまでとこれから

福田アジオ 民俗学のこれまでとこれから のうち、興味のあった「図像資料と民俗学」の章を読了。

民俗学のこれまでとこれから

民俗学のこれまでとこれから

福田氏は最近の民俗学が、歴史離れを起こしていることを問題にし、過去に向かってフィールドワークすることを提唱している。その際に、これまでは「いろいろな文字資料、例えば地誌類・日記・随筆・文書類の中に民俗を発見すべき」とされてきたが、今後はもっと図像を重視すべきとしている。そして、具体的な試みとして、神奈川大学日本常民文化研究所で取り組まれた『東海道名所図会』の絵引を紹介している。挿絵を民俗的な視点で徹底的に読みこもうという試みである。

また、地誌など付されたプロの挿絵に対して、職業的な訓練を受けていない素人絵の民俗的な価値に言及している。その中で登場する明治後期の農民の絵日記、「勝又半次郎絵日記」(裾野市史編さん室)がとても面白そう(本では馬による代掻きや田植えの様子が紹介)。
絵日記といえば、武州忍藩の下級武士、尾崎石城の日記などが思い浮かぶ(幕末下級武士の絵日記―その暮らしと住まいの風景を読む)。ただし、石城は絵師としての教育を受けているが、プロの作品だからという問題はあまり感じない。プロか素人かという点だけではなく、フォーマルな作品なのか、あるいはプライベートの作品なのかといった問いかけも必要であろう。