子規の楽力
坂の上の雲のドラマ放送が始まり、
巷の本屋では関連書籍がたくさん置かれているが、
どれも似たりよったり。
ぱらぱらめくっても、あまり面白そうに見えない。
そんななか先日、
坪内稔典 正岡子規の〈楽しむ力〉を購入した。
- 作者: 坪内稔典
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2009/11/06
- メディア: 新書
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NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』の主人公の一人
正岡子規を読むとあるので関連書籍の一冊ともいえるが、
そのわりには(?)面白い。
坪内氏が注目しているのは、
子規の他者を巻き込んで楽しむ力。
小学生の頃の回覧雑誌にはじまり、
中学生になり熱中した漢詩や演説。
そして、大学予備門時代のベースボール。
子規は一人殻に閉じこもって楽しむのではなく、
まわりを巻き込んで大いに楽しんでいる。
こうした子規の能力を坪内氏は楽力と名付けている。
晩年の寝たきりの病床の中でも
句会を開き、スケッチを楽しみ、
母と妹と一緒にお菓子を食べる家族団欒会を楽しむなど、
子規の楽力は全く衰えない。
そうした楽力は、
子規の書く次のような歌会の案内にも現れている。
瓢亭と鼠骨と虚子と君と我と鄙鮨くはん十四日夕
坪内氏はこうした案内を「はがき歌」と呼んでいるが、
こうした案内をもらうと、
他に用事があっても駆けつけてしまいそう。
子規の楽力は、
対人関係が希薄な現代社会において、
最も必要な能力なのかもしれない。