子規の楽力

坂の上の雲のドラマ放送が始まり、
巷の本屋では関連書籍がたくさん置かれているが、
どれも似たりよったり。
ぱらぱらめくっても、あまり面白そうに見えない。
そんななか先日、
坪内稔典 正岡子規の〈楽しむ力〉を購入した。

正岡子規の〈楽しむ力〉 (生活人新書)

正岡子規の〈楽しむ力〉 (生活人新書)

帯には、
NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』の主人公の一人
正岡子規を読むとあるので関連書籍の一冊ともいえるが、
そのわりには(?)面白い。


坪内氏が注目しているのは、
子規の他者を巻き込んで楽しむ力。
小学生の頃の回覧雑誌にはじまり、
中学生になり熱中した漢詩や演説。
そして、大学予備門時代のベースボール。
子規は一人殻に閉じこもって楽しむのではなく、
まわりを巻き込んで大いに楽しんでいる。
こうした子規の能力を坪内氏は楽力と名付けている。
晩年の寝たきりの病床の中でも
句会を開き、スケッチを楽しみ、
母と妹と一緒にお菓子を食べる家族団欒会を楽しむなど、
子規の楽力は全く衰えない。


そうした楽力は、
子規の書く次のような歌会の案内にも現れている。


瓢亭と鼠骨と虚子と君と我と鄙鮨くはん十四日夕


坪内氏はこうした案内を「はがき歌」と呼んでいるが、
こうした案内をもらうと、
他に用事があっても駆けつけてしまいそう。
子規の楽力は、
対人関係が希薄な現代社会において、
最も必要な能力なのかもしれない。