展覧会のはしご


元気のない祖母を見舞うために、
昨日から実家の北九州へ。
昨日見舞いを済ませ、
今日は北九州で行われている展覧会をはしごします。
北九州を離れて、もう20年以上がたちましたが、
その間にいろいろな文化施設が立ちました。
まずはそのうちの一つの「いのちのたび博物館」に。
博物館はJRのスペースワールド駅を降りてすぐ。
秋の遠足シーズンなのか、
朝から学校団体のバスが次々に到着し、
たくさんの生徒を吐き出していきます。
お目当ては恐竜の化石なのでしょうか、
特別展には目もくれず、常設展会場に向かっていきます。
自分の方は静かで落ち着いた特別展会場へ。
現在は秋の特別展として、
「美しき九州の旅〜「大正広重」初三郎がえがくモダン紀行〜」が開催中です。
展覧会は大正から昭和初期を中心に、戦後すぐあたりまで、
2000点を超える全国各地の鳥瞰図(名所図絵)を描いた吉田初三郎を紹介したもの。
展示室には、九州・山口県各地の鳥瞰図やポスターなどがずらっと勢揃い。
かなり見応えがあります。
吉田初三郎の肉筆の原図は、
最近では八戸市博物館の「吉田初三郎と八戸」でかなりの点数が展示されたはずですが、
今回の展示はそれを上回る規模に思えます。
また、初三郎の鳥瞰図は、大量に受注しているため工房制作になっていて、
昭和10年頃までは、
弟子である前田虹映の画力が初三郎の大きな武器になっていたことも初めて知りました。
前田虹器は山肌や海岸線の岩肌など、日本画的なボカシ技術を活かした手法で表現していて、
対して初三郎の画風は、山肌の表現などもっとシンプルだったそうです。
これらのことも、大量の原図に当たることで見えてきたことなのでしょう。


その後、ミュージアムショップで図録をゲットした後、
JRで小倉まで戻り、
図書館に併設してできている北九州市立文学館へ。
こちらでは「生誕100年記念 伊馬春部−向こう三軒両隣りの時代−」が開催中。
伊馬春部は、明治41(1908)年、
鞍手郡木屋瀬町(八幡西区木屋瀬)に生まれ、
脚本家、劇作家、歌人、小説家として活躍しました。
この企画展では、
彼の生きた時代と人々との交流を軸に、
5つの時期に分けてその生涯が紹介されています。
1.江戸時代の長崎街道木屋宿の豪商の家に生まれ、旧制鞍手中学を卒業するまで。
2.折口信夫に師事した國學院大學時代。
3.井伏鱒二門下の三羽烏といわれた文学青年時代。
  さらに「ムーラン・ルージュ新宿座」での人気脚本家時代。
4.ラジオドラマ「向う三軒両隣り」から人気作家に。
  以後、放送界のパイオニアとして活躍した時代。
5.児童文学や童謡を発表。たくさんの校歌などを作詩。
  そして、その晩年。
伊馬春部については、
最近、桟比呂子 やさしい昭和の時間

やさしい昭和の時間―劇作家・伊馬春部

やさしい昭和の時間―劇作家・伊馬春部

も刊行されていて、できれば合わせて読みたいところ。
少し気になったところとしては、
伊馬春部は写真魔で、あたり構わず写しまくっていたとのこと。
図録にも、津軽で撮影した昭和31年の写真のベタ焼きが、
取材ノートとして掲載されていますが、
それがなかなかいい写真なので、
他の写真もみてみたいところ。
また、野口冨士男だけでなく、伊馬春部も日記魔で、
中学入学から晩年まであるそうです。
その日記の内容も気になるところ。



最後に時間が少し余ったので、
小倉駅北口の古書城田に行ってみました。
入ると足下にネコがいて、びっくり。
かなり人なつっこいネコで、足にしがみついてきます。
手がふさがっていたので、
かまってあげられないうちに、いつの間にか入口の定位置へ。
きっと看板ネコなんでしょう。
電車まで時間がないので、
あわててみましたが、欲しい本がかなりありそう。
取り急ぎ欲しかった肌色文庫こと、中公文庫を中心に4冊購入。
岸田麗子 父 岸田劉生

父 岸田劉生 (中公文庫)

父 岸田劉生 (中公文庫)

車谷弘 銀座の柳
銀座の柳 (中公文庫)

銀座の柳 (中公文庫)

野村胡堂 胡堂百話
胡堂百話 (中公文庫)

胡堂百話 (中公文庫)

内田百ケン 漱石先生雑記帖河出文庫


あわてて小倉駅に戻り、
かしわめしとビールを買って、ソニックへ。
至福の一時。