幕末下級武士の絵日記

昨日から6日間連続の休みに入る。
今日は晩にタイ料理屋での飲み会が予定されている。
先日タイから帰国した知人のおもしろ土産話しを聞こうという趣向。
そのお楽しみの前に、
松山の図書館でいろいろと調べもの。
それから書店まわり。
新古書店で、
猪俣勝人 日本映画名作全史 戦後編

 
新刊書店にて
大岡敏昭 幕末下級武士の絵日記 その暮らしと住まいの風景を読む を購入。
幕末下級武士の絵日記―その暮らしと住まいの風景を読む

幕末下級武士の絵日記―その暮らしと住まいの風景を読む


このうち後者の本は、武蔵国忍藩の下級武士である
尾崎石城が書き記した「石城日記」(慶應義塾図書館蔵)を取り上げたもの。
「石城日記」は文久元年から翌2年の178日間を記録したものだそうが、
この日記の何よりもユニークなのは絵日記になっているということ。
石城には画才があり、
よく頼まれて軸物絵、屏風絵、襖絵などを描いている。
それだけに日記に描かれた絵も非常に写実的で、
江戸武士の生活が文字だけでなく、絵によっても浮かび上がってくる。
この「石城日記」、日々の食生活の記述が細かいことから、
これまでも原田信男氏による食生活の分析はあったが、
さらに絵を十二分に活用することで、
下級武士の生活と住まいを読む解こうという大岡氏の試みもとても興味深い。
なんといっても、
石城の絵には、自宅や友人宅をはじめ、
人々がしばしば集まっていた寺、余暇に飲みに出かけた料理屋の絵が何枚もあり、
その絵にはそれぞれの部屋にあった生活用具まで細かく描き込まれているのだから。
それにしても、
私がこれまで見てきた江戸武士の日記は、
仕事がらみの公的な記述が多く、それに若干私的な記述が交じる程度なのに、
この「石城日記」はなぜこうまでも私的生活の記述に終始しているのかと思う。
尾崎石城は当初は御馬廻役で百石の中級武士だったが、
安政4年に上書して藩政を論じたため蟄居を申し渡され、
わずか10人扶持の下級武士に格下げになってしまっている。
このように政治的に冷遇され、たいした仕事もなくなってしまったことが、
皮肉なことに私生活満載の江戸武士の絵日記を生み出すことになったのではなかろうか。
その意味で、和歌山藩の同じく下級武士で、
江戸勤番中に日記を書き残した酒井伴四郎のケースと似ている。
伴四郎も臨時の勤番でそもそも仕事がほとんどなく、
だからこそ江戸の物見遊山に励み、食生活も細々書き込んだ日記を遺しているのである。
それでは、仕事に忙しい中級武士の日記はどんなものか。
いましばらく宇和島藩士三浦家の日記を読み進めていきたい。