今日も昨日に引き続き、
天保7年10月23日付、
江戸の三浦義信が宇和島の妻久美にあてた手紙から。


御前様(藩主の正室)は、
私が植木についてよく知っていることをご存知で、
お育てになっている鉢植三鉢を、
寒さに痛まないよう手入れするように
奥老を通じてお話がありました。
とても立派な鉢植えで、これは朝鮮蘇鉄でしょうか。
かわいらしいのは細い蘇鉄で、三鉢とも蘇鉄でした。
江戸は寒さの強い土地柄。
痛まないとよいがと心配です。
おそらく紫万年青の類ではないと思います。
宇和島から草木そだてぐさの書物をもってきているので、
育て方は大体はわかるつもりでいます。


義信のガーデナーぶりは宇和島藩の奥向きでも知れ渡っていたようで、
ついには御前様(藩主の正室)からも朝鮮蘇鉄の冬越しを頼まれています。
御前様は7代藩主伊達宗紀の正室観子。
佐賀藩鍋島家より文化13年にお嫁入りしています。
寒さに弱い蘇鉄だけに、
このお姫様から頼まれた蘇鉄がちゃんと育つか、
義信もやや不安そう。
こういう時に頼りになるのは園芸の書物。
草木そだてぐさは草木育種のこと。
著者は幕臣本草家岩崎常正(号灌園)で、
文政元年に出版された園芸植物の栽培全書ともいえる書物です。
義信は宇和島からもってきていたこの書物を開き、
どうやって蘇鉄を冬越しさせるか、しばし考えたことでしょう。