最近川本三郎さんの君美わしく―戦後日本映画女優讃 (文春文庫)
を少しずつ読んでいます。
そのなかに、映画会社の五社協定により、
女優生命をおびやかされた
山本富士子、前田通子へのインタビューがありました。
山本富士子の場合、
昭和38年にそれまでの大映所属を離れ、
フリーを宣言した山本に対して、
映画会社五社すべてが山本の映画出演の道を閉ざしたというもの。
前田通子については全く知りませんでしたが、
はじめてヌードになった女優だそうで、
東宝でスターになった矢先に、
ある作品で監督の指示に従わなかったとして、
いきなり会社を解雇され、
以後五社協定により映画への道を閉ざされたというもの。
映画会社、映画界という一つの村社会のなかで、
個人がどのように陰湿に攻撃を受けたのか、
現在の職場の状況を見るに、身につまされます。
山本富士子はその後舞台女優として開花しますが、
それ以後一本の映画出演がない状態が続いているそうです。
前田通子は、テレビ出演なども映画会社に妨害され、
地方のキャバレー回り、クラブ歌手、台湾映画への出演などを経て、
昭和50年代になると芸能界から姿を消します。
前田への攻撃は
前田が人権擁護委員会へ提訴し、
主張が全面的に認められ、勝訴しながらも、
仕事の妨害が裏でつづくひどいものであったようです。
前田は川本さんのインタビューの申し込みに対して、
何度も断ったそうです。
映画会社だけでなく、マスコミにも叩かれ、
興味本位に書き立てられ、何重にも苦しんだようです。
この本には、
何人もの有名な女優のインタビューがあり、
それぞれ魅力的な方ばかりですが、
やはりこの前田通子へのインタビューが印象に残ります。