[読書]

そんななか、
西和夫 海・建築・日本人 を読了。

海・建築・日本人 (NHKブックス)

海・建築・日本人 (NHKブックス)

このなかでは、日本海岸に残る望楼を取り上げた
第三章「海を見た建築たち」が面白い。
その内容は、日本海側の廻船業の家に、帰港する船を見張り、
天候を読み、廻船業を指揮するため、屋根から突き出た望楼があったというもの。
伏木(富山県高岡市)出身の作家堀田善衛の生家も海運業を営み、
望楼がある家だったらしい。
それ以外にも日本海側に三例ほど、望楼の事例を拾い出しています。
ところで、望楼は日本海側に多いのは確かだと思いますが、
望楼的な施設は他にはなかったのかという疑問も残ります。
私が以前調査した資料のなかに、松山市三津浜の泉回漕店の引札がありました。
引札は現在の宣伝チラシにあたるもので、
この泉回漕店の引札は明治中期のものと思われ、
泉回漕店の店の様子が描かれています。
このなかに注目される建築があります。
泉回漕店は二階建てのコの字形の木造二階建ての巨大な建築ですが、
海に向かった二階の屋根上に吹き抜けの遠見台が見えます。
これはまさしく望楼的なものといってもいいでしょう。
江戸時代の物流は全国的に廻船によって支えられていたわけですから、
望楼的な建築は、かつて日本全国の港町に当たり前にあったのではないでしょうか。